2つのレポートの相違点から答えが出た!「人は何によって幸せを感じるのか?」
ここに2つのレポートがあります。
一方は慶應義塾大学大学院前野隆司教授が
書いた記事『平均年収320万円でワースト1位の沖縄県民が
「幸福度日本一」』です。
(※1)
もう一つは内閣府が発行した
『満足度・生活の質に関する調査」
に関する第1次報告書』です。
(※2)
今回はこの2つのレポートを読み解きながら、
「私たちは何によって幸せを感じるのか」
を探っていきます。
1.幸せの構成要素
平均年収320万円で国内最下位の沖縄県の幸福度は、
なぜか日本一高い。
その理由として前野教授は、「なんくるないさ-」
という方言に代表される
「楽観的な県民性」を挙げています。
暖かい気候故、必ずしも一生懸命に働かなくとも
衣食住に困るケースが少なくないことが、
楽観的な風土を生み出した、としています。
加えて収入が減ったにも関わらず、
幸福度が増したという2人の身近な事例を紹介し、
2人の共通点として下記3点を挙げています。
なぜ沖縄県の幸福度は高いのか3つの共通点
- 公益性の高い仕事についていること
- 地方にかかわったこと
- 東日本大震災をきっかけにアクションを起こしたこと
では、次の章からは、
前野教授の分析と内閣府の調査を比較していきます。
2.幸せと収入の関係
内閣府の統計調査では
「世帯年収別の総合主観満足度」の中で
世帯年収が「2000万円~3000 万円」までは
年収の上昇に応じて満足度が高まる一方、
それ以上の年収があっても、
満足度はゆるやかに逓減していくと報告しています。
※内閣府:「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書6頁中段より
2つの調査からは、
年収と幸せ(満足)とは
必ずしも正の相関があるとは限らない
ということがわかります。
特に内閣府の調査が示す
「世帯年収が3,000万円以上になると
満足度が下がる」という事実には、大変驚かされます。
3.幸せと地域の関係
内閣府の調査では
地域間での大きな満足度の差異は
みられませんでした。
前野教授と内閣府の調査では、
「都道府県別」と「ブロック別」である点、
質問が「幸福度」と「満足度」である点などが異なる為、
単純比較をするのは、少し乱暴かもしれませんが、
「幸せと地域」には
必ずしも関連性がみられるとは限らないようです。
※内閣府:「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書5頁上段より
4.幸福感をもたらす要因とは
両者に共通点がみられたのは
「世の為に役立っていると自覚している人は
幸福(満足)度が高い」という点です。
前野教授は
年収が下がっても幸福度が高い人に見られる特徴に
①公益性の高い仕事についていることを挙げ、
その説明の中で
「人間の心というのは不思議なもので、
自分だけが幸せになりたいと思っていても
幸せにはなれないのです。
一方、誰かを幸せにしたいと思うと、
自分も幸せになれるのです。」
と明言しています。
内閣府の調査では
「ボランティア活動をしている人」は
していない人と比較して
満足度を高く回答している様子が見てとれます。
※内閣府:「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書17頁上段より
今回2者のレポートの相違点を検証した結果、
「幸福感」は収入や住んでいる場所よりむしろ
「世の中の役にたっている」という
自己有用感によってもたらされる
という結論が導きだされました。
先月のコロナウィルス感染拡大防止における
緊急事態宣言下では、
医療従事者や物流関係者を「エッセンシャルワーカー」と
敬意をこめて呼ぶ風潮がみられました。
また、前野教授が
「収入が下がっても幸福感が高まった人」の共通点として
③東日本大震災をきっかけにアクションを起こした
という点を挙げていました。
コロナウィルス感染拡大は地球規模の問題であり、
東日本大震災より多くの人に影響を与えた出来事です。
「新しい日常」を模索している今、
幸せと満足を感じるキャリア形成には
「公益性の高い仕事」のチョイスが有効といえるでしょう。
参考文献
※1プレジデントオンラインHP:平均年収320万円でワースト1位の沖縄県民が「幸福度日本一」
https://president.jp/articles/-/35899
※2 内閣府HP:令和元年5月24日『満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書』
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf
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